雨の下高井戸 シフト うえお久光

仕事を終えてから、急ぎ友人と約束した下高井戸にあるテイスト・オブ・インディアへ。
下高井戸は「下高井戸シネマ」で「エレニの旅」を見て以来二回目。
駅の改札で大学時代の先輩を発見し、とても熱いものがこみ上げてきたが、めんどうなので声はかけない。
テイスト・オブ・インディアでは、卵とパニール(水牛のチーズ)のカレーを頼む。どれもそれほど辛くなくて、作りこんだ濃厚な味を堪能する。とくに、ベジタブルパコラがよかった。日本で食べた中では一番おいしかったかも。
SF好きな友人とユーチューブの買収や、サイバーパンクの「パンク」とは、何がパンクなのかについて議論する。
よく考えてみると、スターリングが「ネットの中の島々」で書いたような、局所的な不正を個人が撮影して、世界中に動画でアップするようなことは、先日の亡命チベット人の中国政府による虐殺事件のように、すでに実現している。ネットの中の島々を読んでいた頃は、自分も都市ゲリラになってテクノロジー武装することを夢想していたが、いまの自分はアラビアのロレンスではなく、新橋で働くサラリーマンであることを喜ぶべきことなのかどうか考えてしまう。

雨の中、家に帰ってから読みかけていたうえお久光の「シフト」を読了。
最近事情があってライトノベルといわれているものをいくつか読んでいるが、正直どれもピンとこなかった。
叙述の視点の変換が頻繁に起こったり、作者が登場したり、ちょっとついていけませんというものが多かった。こういう想像力を称して、ヘビーな現実のリアリティに対抗する「ライト」な想像力という考え方もあるようなので、自分がついていけていないだけという思いもある。

うえお久光の「シフト」は、主人公の造詣がとてもよかった。終盤までずっと抑えて、最後にブゥボワッーーーっと燃え上がる感じ。
死んだらゲームの世界に戻れないという設定も、ゲームの世界に残ることの必然性、生き残りたいという気持ちにリアリティを与えていてすばらしい。
作品の世界観の中で、作者の言いたいことがきちんとちりばめられていて、とても完成度の高い作品だと思う。もちろん、中高生が読むという目的をしっかりと押さえている。
ちょっと脱帽。「シフト2」もあるみたいなので、早速図書館で予約です。