コラプシウム ウィル・マッカーシー

あんまりかわいくないし、制服のデザインもどうかと思って敬遠していたが、美少女ものは一通り読んでおきたいという誘惑に勝てず、ウィル・マッカーシーの「コラプシウム」を読む。
だまされた。
始めから最後まで、ほとんどオッサンしか出てこない。
表紙の少女は主人公のブルーノっていうオッサンが殺人事件に巻き込まれたときにチラッと登場する捜査局長で、しかもおばあちゃんのコピーが失敗したクローンという設定。どうしてほとんど登場しない端役を表紙のど真ん中に持って来るんだ!
などと憤りつつ、内容についてまとめると、ブラックホールを安定化させたコラプシウムをめぐって、その発明者ブルーノが、彼の仕える女王タムラの要請で星系の危機を救い、タムラをめぐるライバル関係にあるマーロンがまぬけな引き立て役として登場する、だけかと思っていたら最後に一矢報いて、たいへんなことになるというお話し。
だいたい百年先くらいの設定で、人類は太陽系内のいくつかの星に殖民し、人類全体を統べる存在として象徴的に女王を戴き、王政復古している。テクノロジーは、ファックスと呼ばれる電子的に人体および魂を複製可能な装置があり、どこでもドア的にほぼ時間差なく太陽系内のあらゆるところへ行くことができる。
「ほぼ」なのは、ハードSF的な部分は厳密で、コラプシウムを利用した通信コラプシターの速度限界によってきっちり規定されている。このコラプシターのタイムラグをなくすために太陽に巨大なコラプシウムの環を建設することが作品の殻となっている。
ハードSF+スペースオペラというのは納得で、ハードな部分はきっちり作りこまれている(ように思う。ほとんど読み飛ばしたけど)。
ハードな部分にはあまり魅力を感じないし、オペラな部分はオッサンのハードなぼやきがメインでそっちも面白くなかったけど、作中になかなかいい格言がいくつかあってまぁまぁ楽しめた。
「人間の脳は君主制ヒエラルキーに合うように配線されている」とか、「理屈の上では、降格も有意義なキャリアの移動だと考えることが推奨されています―能力を最大限に発揮できる地位に移るのだと。」とか。
同じ著者の「アグレッサー・シックス」は、タイトルとミリタリーな感じがかっこよくて手に取るも、登場する犬のしゃべり方に納得ができなくて放り出してしまった。
嶋田洋一の訳したものは、どうもぴったりフィットしない。
ポール・J.・マコーリイの「4000億の星の群れ」は美少女が出てくるからまだ許せるけど、話としてはいまいちだったし、ステル・パヴローの「暗号解読」は一見楽しそうな設定の目白押しで期待させるわりにはぜんぜんダメだった。
そのうちマイケル・マーシャル・スミスも読んでみようと考えているが、原因を究明したい。