”メタヴァース“と呼ばれる、想像上の場所だ。

ストリートはメタヴァースのシャンゼリゼとも言える。
現実には存在しない通りを、何百万という人間が行き来している。
ストリートのサイズや構造は、あるプロトコルによって決められている。
ストリート全体は、半径一万キロ余りの黒い球体の赤道部分をめぐる、巨大な遊歩道の体裁をとっている。
球体の円周、つまり遊歩道の全長は六万五千五百三十六キロあって、地球の円周よりはるかに大きい。
現実世界と同様、このストリートでもつねに開発が続いている。
開発者たちは、メインストリートから枝分かれした自分だけの小さな通りを設定して、そこに建物や公園などを作る。
このストリートに何かを作るには、GMPGの許可を受ける必要がある。
ストリートに土地を買い、区域設定の許可をもらい、贈収賄検閲官の審査を受け、その他さまざまなことをしなければならないのだ。
そのために企業が支払った金は、すべてGMPGが管理する信託基金に送られる。
ストリートを維持し、開発・拡張していくための機械類は、その基金でまかなわれているのだ。

スノウ・クラッシュ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

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