現実世界では―

つまり、現実の地球には、六十億から百億の人間がいると言われる。
いまこの瞬間に、そのほとんどが何をしているかというと、泥をこねて煉瓦を作っているか、AK−47を分解掃除しているかだ。
そのうち、自分用のコンピュータを買えるほどの金をもっているのは、約十億人。
この連中だけで、残りの人の財産を集めたよりも多くの金をもっていると言える。
そのうち、実際にコンピュータを買うのは四分の一、ストリートのプロトコルを扱えるパワーをもったマシンを買うのは、さらに四分の一。
つまり、いつでも好きなときにストリートを訪れることのできる人間は、約六千万。
そのほか、自分では買えないが、公衆マシンを使ったり学校や勤め先のマシンを使える人たちが、約六千万。
任意の時間におけるストリートの人口は、ニューヨーク・シティの倍というわけだ。
狭い地域が開発過剰になったのは、そのせいもある。
ストリートにネオンサインを掲げたりビルを建てたりすれば、金持ちや流行の最先端をいく連中や実力者たち一億人が、毎日の生活の中で目にすることになるからだ。

ダイヤモンド・エイジ〈上〉 (ハヤカワ文庫SF)

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